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中林梧竹

中林梧竹は日下部鳴鶴、巌谷一六と共に「明治の三筆」と称されております。当時の書道は漢様と和様がありましたが楊守敬が碑帖を携えて来日し、それが大変な影響を与え日本の書道会が漢様に大きく動き始めます、当時珍しく清国に行っていた中林梧竹、弟子の多かった日下部鳴鶴らが中心になったので、その運動の立役者として称された言説かもしれません。

中林梧竹は文政10年肥前国小城藩(現在の佐賀県小城市)に生まれます。実家は代々続く鍋島藩の家臣です。江戸に留学し市河米庵、山内香雪に師事を受けます。明治時代に入り六朝碑文の研究を始めます。その研究も大変熱心で明治天皇に碑文を献上するまでになります。大正2年87歳で逝去します。

王羲之の臨書は大変難しいと言われてますのでそれを明治天皇に献上するともなれば命がけで制作していたことが容易に推察できます。中林梧竹本人も「王羲之を臨書するのは難しい、それに比べると王献之はやさしい。これは親子二人の優劣であろうか」と述懐しております。漢学の基礎に準拠した作風でありながら中林梧竹の掛け軸作品は個性、特徴がはっきりしており一目で中林梧竹の掛け軸作品とわかる作風です。おそらく中林梧竹の書風は以下の拘り、執念があったのではないでしょうか。

中林梧竹は本人の書法の在り方についてこのように説明します。

書家は「無法」(何も知らない状態)から「有法」(修練を積んで美しい書を書くことができるレベル)になり、そして「超無法」(壁を破ってもうひとつ良い書が書けるレベル)に至ると論じております。世阿弥の「守」「破」「離」に近い思想的な話ですね。杉並区で30年以上買い取り、査定をしていますが中林梧竹の掛け軸作品を持っている書家は硯、墨を始めとした書道具も拘りがあるものが多いです、どこかで中林梧竹の書道思想を受け継いでいるのかもしれません。

そんな中林梧竹は書道は「無法」「有法」「超無法」から「神にして化す」作品が「ホントの書」だと言っております。西川寧、手島右卿、殿村藍田ら書道にたずさっわて来た書家もそうですが壮大なテーマが各書家には確かにあります、中林梧竹は明治時代の書家だからなのか、数ある書家の中でも難解な言説が多いですね。また「書法には捨てるものもなく、新たに立てるものもないのだ」と語ります、一見禅問答にも近い修行僧のような態度ですがその哲学的深奥が書家中林梧竹の掛け軸作品に表出されているのではないかなと思います。

 

 

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