書道具について
書道具について
一般に書道具といえば硯、紙、筆、印材を文房四宝と呼びますがこの条件で書道をする人はあまりおらず一般的には墨汁と硯を使った義務教育の書道が思い浮かびます。学校教育の場合江戸期より寺子屋が日本では発達してきた歴史があり日本は当時世界でもトップクラスの識字率があったと言われております。その流れのひとつが義務教育の書道であったことは想像に難くないですが書道具もそこまで数がいるものではないので基本的な理念は「文字を正しく整えて書く」というスタイルだと思います。書道が日本国の識字率を向上させたことにより日本の伝達文化が大きく発展したことは異論がないと思いますが、いわゆる「道」の文化は国粋主義として戦後にいったん廃止された過去があります。
そういった中で書道を表現する舞台が書道具になります。書道具は硯、筆、紙、墨により成立しますが書道具として最も価値のある道具は一般的には硯であり、其の中でも中国の硯は往時の書道家に珍重されてきました。中でも端渓硯、特に老抗の硯は時代のないものでも高額で今でも人気があります。日本の硯も地域によって様々ですが山梨の雨宮静軒の鈴井rは造形も現代的で往時の人気ぶりがうかがえる作行でもあります。
筆に関しては歴史が古く伝説上は秦の蒙恬将軍が作ったと言われております、中国は武人も書を能くしていた証左でもあります。その後紀元前4世紀頃の古墳から筆、竹筒が出土していることからその時代に軍隊内でのコミュニケーションツールとして使われていたようです。筆は持つところを軸といい毛の根元のから腰→腹→頭→穂先となっておりその毛の材料も馬、羊、猪、孔雀など様々な動物の毛が使われており試行錯誤の歴史が垣間見えるのは面白いですね。ただ筆は使ったあと、丁寧に洗わないと墨の中にある膠が固まり筆が凝固してしまいますので必ず手入れをしないと使えなくなります、当社も査定、買取りの際固まった筆をよく見かけますが少しもったいない気持ちにもなります。
書道具では硯、筆に続き欠かせないものが紙になります、紙と言っても習字、書道などで目的もだいぶ変わります。習字の場合寺子屋から発生し続けた文化である「奇麗に模倣すること」が大事なテーマになります。習字の場合は半紙、墨汁を使うことが多いのも練習が固定されているからではないでしょうか?転じて書道の世界は当該書道家の作品としての内容が評価されるので目的、作風によって紙の内容もだいぶ変わってきます。初心者用に使われる機械漉半紙ではなく手漉きの美濃和紙や中国の紅星牌などを好んで使われる書道家の方も多いですね。また和紙は麻などの原料を使っており繊維がしっかりしているため破れにくい、という特性があることも和紙の見どころです。それに比して中国の紙は竹などの植物を原料としておりますが繊維が短く墨を吸収しやすく淡墨が良く出るため書道家に人気もあります。
同じように墨も習字、義務教育の世界では墨汁が主流ですが書道家にとっては墨を擦ることが一つの大事な仕事にもなります。また墨も明時代の古墨から呉竹精昇堂や墨運堂などのメーカー製の墨まで多岐に渡ります。一回の使用でなくなってしまう、という意味では書道具の中でも最も儚い存在かもしれません。また初心者用の墨の原料は㎏500円くらいですが書道家がよく使う墨は㎏5万円前後するものもあり、書道具の中ではもっとも小さい墨ですが価格はだいぶ変動します。また墨は古いものほど良いといわれており年数がたつと膠が落ち着き味が出て骨董品さながらの景色が表現されひとつの美術品としてすらの佇まいすら感じさせます。書道具の中では数があるほうですが古墨の領域ともいえる墨は本当に少ないです。
茶道具や華道にもいえることですが書道具も普段使いから古美術品とよべるもので奥が深いですね。
この記事を書いた人
東京美術倶楽部 桃李会
集芳会 桃椀会 所属
丹下 健(Tange Ken)
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