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2020.02.01

【墨の売却】高額買取される墨とは?

参考買取価格4万円

墨の売却について

ご実家の整理や先代から受けつがれた書道具に関してどのように処分、売却をすればいいのか悩まれている方も多いと思います。また硯、筆、墨、和紙など書道具はジャンルも様々でどの分野が高く売れるか?どこの買取業者に査定を頼めばいいのか悩まれる方も多いと思います。

書道は義務教育でもある手前多くの方が身近に携われる文化でもありますが墨を始めとした書道具は書道家を中心とした、蒐集家の方などが所持されている墨は小さいながらも、内容によっては高額で売却できる墨もあります。また墨は使えばなくなるものですので硯、墨、和紙に比べて常に需要はあります。しかし古い墨であれば扱いも難しくどのような点を考えれば高額査定が可能なのか、というお問合せもよく頂きます。

ここではそのような小さいながらも需要の高い墨の売却方法について説明いたします。

 

墨とは?

墨は書道で使用される書道具ですが歴史も存外深く中国から伝来してきたのは1000年以上昔になります。

墨は紀元前殷時代が発祥といわれておりますがこの時代の墨がいかなる形状をしていたのかは、はっきりとはわかっておりません。元来墨は書道用品として扱われる以前に罪人に対する記号であったり祭祀に使われていたと言われており、また木簡、竹簡などに液状の墨が塗られておりました。現在の形状になるには唐時代に墨匠が出現してからになり、日本にも「日本書紀」に墨の伝来が記述され、松ヤニを使用した松煙墨が製作されるようになります。その後奈良時代には写経にも用いられ広く使用されるようになります。その後政治の中心は京都、鎌倉、東京など時代により変遷していきますが墨の中心は現在に至るまで奈良県になります。

 

墨の種類

 

墨の原料である煤の種類は日本産の油煙墨があり原料は菜種油、胡麻油などが餅られております。それと中国で生産されている松煙墨があり松の木片を燃焼させて煤をとるものがあり、朱墨と言われる朱粉で作られた墨もあります。

日本の製墨業者

日本の製墨業者が製作した墨は内容によっては高額で売却できる墨があります。和墨の業者は9割が奈良県に拠点を置いております、このことは墨が伝わり広まったのが奈良時代と無縁ではないと思います。この時代に墨が普及しその後遷都が何度も行われますが寺社仏閣が多く残った奈良県では写経の文化が存在し続けたことにより室町、江戸期になっても奈良県は墨の文化の中心であり続けました。現在も多くの製墨業者が墨を製作し続けております。

 

墨運堂

1805年創業の老舗。「百選墨」などの記念墨は大変人気が高く愛好する書道家が多いです。また墨の普及のために全国で墨の展覧会である「墨展」を主宰するなど墨の普及に務めております。書道家向けに自身の書道作品をモチーフとした墨の制作を承ったり印材の雅号印を製作するなど様々な書道関係のサービスがあります。

古梅園

奈良県に拠点を置く古梅園は創業1577年の老舗のメーカーです。元禄時代には徳川幕府に公認され紀州墨などを製作しており現在も日本有数の古墨として多くの書道家、蒐集家に愛玩されております。古梅園は老舗だけあって古墨も多く現在の買取り業界でもよく見かけることがあります。それだけ人気のあった墨ということでもあります。

呉竹精昇堂

1902年創業 サインペンの開発に成功し当時の米国大統領に気に入られ日本でも爆発的なヒットとなります。その後くれ竹ぺん、墨すり機など所に関する商品でのヒットが多いことでも有名なメーカーです。墨に関しては「千寿墨」という記念墨も大変な人気を博し現在でも買い求める書道家、愛好家がおります。

玄林堂 

1717年創業の老舗メーカーです。胡麻由墨、松煙墨、菜種油煙など多くの種類の墨を製作し明治、大正時代の古墨が多く、現在も流通しております。書道家榊莫山が愛好していたことでも有名です。

 

 

高額売却が可能な墨とは?

古墨である

墨に限らず硯、筆、和紙にも言えますが古美術品としての評価をされる書道具は高額で売却することが可能になります。例えば伊万里焼でも現代の写しと江戸時代初期の伊万里焼とでは値段が大分違います。墨は唐時代より存在しますが現在流通している中で古い墨は明墨になります。その中でも著名な墨匠として方于魯がいます、晩年に自身の墨の系譜を出版しこれが現在も墨の資料として珍重されております。また方于魯の師匠の程君房も古墨の墨匠として超一流の作家です。しかしながらこの時代の墨匠の作品はコピー品が多く慎重な鑑定が必要となります。

 

状態がいいか?

墨は当然ですが使ってなくなるものです。墨は使用されることによってその価値を発揮します。使用される場合は形状がしっかりしていないと使うことができません。ある程度時代の経った墨ですと保存状態により持っただけで壊れてしまうことがよくあります。墨は230年前の墨でも保存状態によりその価値が大きく変わります。湿度の保った部屋で保存されている墨と直射日光に当たる部屋に置いていた墨とでは同じ墨でも査定額が大きく変わります。

希少な墨であるか?

例えば唐墨の中国書画墨は1960年代の墨は高額買取が可能です。理由は数が少なく質が良いためです。これが1980年代を超えると日本の企業が入ってきており大量生産化が促進され安価で入手できる反面質がだいぶ落ちます。たった1020年の違いで見た目もあまり変わりませんがそれだけ墨というものは製作者によって内容が変わるデリケートな存在といえます。

著明な墨匠の作品であるか?

先ほども申し上げましたが明時代の方于魯、程君房の作品であれば高額買取が可能です。明時代だけではなく清時代の曹素功なども高額査定が期待できます。曹素功の製作した「曹氏墨林」は18挺の墨で当時多くの文人に愛玩された実用の墨でした。その後多くの写しが製作され現在も曹素功の名声は最も高いといえます。清時代は康熙帝~乾隆帝~嘉慶帝の時代において中国経済も繁栄し、それが中国の書道、芸術を隆盛させた一因ともなり多くの墨匠が活躍した時代でもあり名墨が数多く製作されています。

来歴がわかるか?

古陶磁は贋物の多い世界ですが研究者でもある小山富士夫の箱書きがあると価値があがるように墨の世界もその世界の第一人者が所持していた証明紙、箱書きなどがあると高額売却が可能になります。日本でいえば市川米案、貫名菘翁などがその立ち位置になります。また昭和の三筆など著明な書道家が所持していたことが証明できるものがあれば価値が高まることもあります。古墨の場合来歴が加点ポイントとなることが往々にしてあります。

 

墨を売却する為のまとめ

墨はほとんどが手に平に収まる小さい存在です。そのため墨を査定することは墨本体もそうですが状態や箱などを査定し総合的に鑑定しなければなりません。また時代のある墨は壊れやすく扱いも慎重になります。

墨のコレクターである宇野雪村は「墨本体が燃焼してなくなる存在である」墨を誰よりも愛しており、その熱情を自身の著作である「古墨」で説いております。確かに墨は硯、筆、和紙と違いその存在をなくすことによって価値を発揮するという儚い存在でもあります。こういった存在は古美術、茶道、書道などの世界でもなかなか存在しないのではないでしょうか。

そういった墨は製墨業者、墨匠、状態、来歴など多角的な視座から査定することが製作した墨匠に対する礼儀だと思います。書道家が大事にされていた墨を一点一点誠実に対応する買取業者を探すことをお勧めいたします。

 参考文献 宇野雪村著「古墨」木耳社